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2014/12/09

希望不要論

日本の方は、貧乏な一人の少年が「納豆売り」「夕刊売り」などから「靴磨き」をやり、工場に入り、模範職工になり、取り立てられて、一大富豪になる映画だった。――弁士は字幕にはなかったが、「げに勤勉こそ成功の母ならずして、何んぞや!」と云った。 それには雑夫達の「真剣な」拍手が起った。然し漁夫か船員のうちで、 「嘘こけ! そんだったら、俺なんて社長になってねかならないべよ」 と大声を出したものがいた。 それで皆は大笑いに笑ってしまった。 後で弁士が、「ああいう処へは、ウンと力を入れて、繰りかえし、繰りかえし云って貰いたいって、会社から命令されて来たんだ」と云った。 小林多喜二「蟹工船」 ...

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